【組織マネジメント100の考え方】#2「ビジョンは組織の北極星となる」

― 迷わず進むための“未来の光”を持て ―

企業や組織が変化の激しい時代を生き抜くには、「自分たちはどこに向かっているのか?」という問いに対する明確な答えを持っていることが重要です。その答えとなるのが、「ビジョン(Vision)」です。ビジョンとは、組織が将来的に実現したい理想像を描いたものであり、言い換えれば“組織の未来の姿”を表すコンパスであり、北極星でもあります。

ビジョンがもたらす「方向性」と「意義」

企業が成長していく上で、日々の業務に忙殺されていると、いつの間にか「何のためにこの仕事をしているのか」が見えなくなることがあります。ビジョンは、こうした迷いや惰性を断ち切り、全社員に「どこへ向かっているのか」という方向性を明示する役割を果たします。

たとえば、「10年後に地域で一番信頼される医療機関になる」といったビジョンが掲げられていれば、すべての事業戦略や人材育成方針はその目標に向かって設計されるべきです。仮に短期的な利益を得られる施策であっても、ビジョンとずれていれば選択すべきではありません。

ビジョンが明確であるほど、意思決定のブレが少なくなり、社員一人ひとりが仕事の意味を理解しやすくなります。自分の業務が組織の未来像とどうつながっているのかを実感できると、人はより主体的に、そして情熱を持って働くようになります。

感情を動かす“共感型ビジョン”が重要

一昔前までは、ビジョンと言えば経営者だけが知っている“社内資料の一行”という扱いも珍しくありませんでした。しかし、現代の組織に求められるのは、社員全員が“共感できるビジョン”です。それは単に数字や市場シェアだけを示すものではなく、「このビジョンに自分も参加したい」「その未来を一緒につくりたい」と思えるような、人の感情に訴えるものです。

たとえば、トヨタが掲げる「すべての人に移動の自由を」や、スターバックスの「人々の心に潤いを与える第三の場所をつくる」といったビジョンには、事業を超えた“社会的意義”と“人間的な魅力”が込められています。こうしたビジョンは、社員の行動指針としてだけでなく、顧客やパートナーとの信頼関係を築く土台にもなります。

ビジョンの策定は「トップダウン」と「ボトムアップ」の融合

ビジョンの策定は、トップだけが決めて押し付けるものではありません。もちろん、最初の構想や理念はトップから生まれることが多いですが、それを形にし、現場に根付かせるには、社員の意見や想いも取り入れながらブラッシュアップしていくプロセスが不可欠です。

たとえば、ビジョン策定時に社員向けワークショップを開催し、「この組織の未来はどうあるべきか」「自分たちは何を誇りに思っているか」などの声を集めることで、現場のリアルな視点が反映された、より実効性の高いビジョンになります。

このプロセス自体が、社員の“当事者意識”を育て、ビジョンが「誰かのもの」ではなく「自分たちのもの」になるきっかけとなります。

ビジョンは“掲げる”だけでは意味がない

ビジョンを作っただけで満足してしまう企業も少なくありません。しかし、掲げただけでは、何の効果も生まれません。本当に意味のあるビジョンとは、日々の業務の中で繰り返し語られ、行動に反映されているものです。

たとえば、朝礼でビジョンに触れる、会議資料に常に記載する、評価項目にビジョンとの整合性を入れるなど、「常にビジョンが目に入る」「自然と意識される」仕掛けが必要です。

また、リーダー層が日常のマネジメントや意思決定の中で、ビジョンを基準に判断していることを示すことが、最も強力な“ビジョンの体現”となります。言葉ではなく、行動で示す。これが浸透の鍵です。

ビジョンを定期的に見直す視点も忘れずに

社会環境や顧客ニーズが変化する中で、策定時のビジョンが現実とずれてきた場合は、ビジョンの見直しも必要です。これはブレや撤回ではなく、「進化」です。ビジョンは生き物であり、固定された金言ではなく、組織とともに成長していくべきものです。

たとえば、5年前は「地元No.1の医療機関」が目標だったとしても、実際にその立場を得た今、「次は何を目指すのか?」という問いに応える新しいビジョンが求められます。

このように、組織のステージや社会情勢に合わせて、ビジョンを更新・再定義することは、長期的な成長に向けて不可欠な営みです。

結論:ビジョンなき組織は、漂流する

どれだけ優秀な人材が集まっても、どれだけ資金があっても、ビジョンがない組織はやがて迷走します。ビジョンは、組織にとっての“北極星”です。常にそこに向かって歩み続けることで、短期的な成果や問題に翻弄されることなく、ぶれずに本質を追い求める力が備わります。

ビジョンとは、組織の未来に対する“宣言”であり、“希望”です。そしてそれは、経営者や幹部だけのものではなく、社員一人ひとりの行動に繋がる“生きた未来図”でなければ意味がありません。

あなたの組織にとっての北極星は、どこを指しているでしょうか? その星を、全員で見上げられる状態が、強い組織の条件です。

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