【組織マネジメント100の考え方】#9「すべての戦略は目的から逆算する」

― 成功する組織は、“目標起点”で動いている ―

経営者やリーダーが日々直面するのは、「どうすれば業績を伸ばせるか」「どのように組織を成長させるか」といった問いです。その答えを探すうえで欠かせないのが、“戦略”の存在です。しかし、多くの現場では「とりあえず目の前の課題を処理する」「今できることから始める」といった、“戦術ベース”の思考にとどまってしまいがちです。

戦術とは、手段です。大切なのは、「なぜその戦術を選ぶのか」という“戦略”の視点。もっと言えば、「何のためにその戦略を立てるのか」という“目的”の視点です。
この「目的からの逆算」がないまま進めば、行き着く先は迷走です。組織運営において、“目的起点”の思考は絶対的な基盤なのです。


戦略は“選択”と“集中”である

戦略とは、限られた資源(ヒト・モノ・カネ・時間)を、目的達成のために最適に配分するための「意思決定のフレーム」です。つまり、「何をやるか」だけでなく、「何をやらないか」も含めて、目的達成のために最短距離を描く道筋が戦略です。

たとえば、あるクリニックが「地域で最も信頼される存在になる」という目的を掲げたとしましょう。そこから逆算すれば、単に来院数を増やすことや、広告を打つことだけでは十分ではないはずです。診療の質、スタッフの接遇、地域連携、患者フォローの在り方など、“信頼”という価値を高めるためのリソース配分が求められます。

ここで目的があいまいなままだと、「今月の売上を伸ばそう」「イベントを開催しよう」など、短期的な戦術の羅列に陥ってしまい、組織の軸がぶれていきます。


なぜ「逆算思考」が戦略に欠かせないのか?

逆算とは、「ゴールを設定し、そこから現在にさかのぼって行動計画を立てる」という思考法です。この発想が戦略に必要不可欠な理由は、以下の3つに集約されます。

  1. 手段の選択が目的に沿うようになる
     目的から逆算すれば、「今やっていることが、目標に対して本当に意味のある行動か?」を常に問いながら判断できます。

  2. 進捗が測定しやすくなる
     ゴールを設定することで、途中経過において「どこまで到達しているか」「あとどれくらい必要か」を数値で把握できます。

  3. 優先順位が明確になる
     目の前に複数の課題があっても、「どれが目的達成に最も重要か」という軸で優先順位をつけられます。


現場でありがちな「目的の見失い」

多くの現場では、戦術が目的化してしまう“倒錯”が起きています。

例を挙げてみましょう:

  • 「ブログを週1で更新する」→ 本来の目的は集客だが、更新自体が目的化している

  • 「売上を増やす」→ 本来の目的は患者数の安定や経営基盤の強化だが、売上数字だけを追い、無理なキャンペーンに走ってしまう

  • 「会議を毎週実施」→ 本来の目的は情報共有や課題解決だが、会議自体が目的化し、中身が伴わない

このように、戦術が目的に結びついていないと、どれだけ頑張っても「結果につながらない努力」を続けてしまうリスクがあります。逆に言えば、「何のためにやっているのか?」を常に問い直すだけで、組織の生産性は飛躍的に向上します。


“ビジョン起点”で戦略を設計する実践手順

では、実際に目的から逆算して戦略を設計するにはどうすればよいのでしょうか?以下はそのためのステップです。

ステップ1:目的・ゴールを言語化する

  • 数字目標だけでなく、どんな状態を理想とするかを明確にする
     例:「3年後、地域で紹介率No.1の医院になる」など

ステップ2:目的達成のための“成功要因”を洗い出す

  • 何が整えばその目的が達成されるのか?(信頼、ブランド、体制、採用、人材育成など)

  • 自社の強み・弱みと照らし合わせて、成功の鍵を特定する

ステップ3:時間軸と数値目標で逆算する

  • 1年後・半年後・今月など、段階的に落とし込む

  • 例:「1年で紹介率を15%→25%に増加」→「半年で口コミ数○件」「今月のアンケート改善率○%」など

ステップ4:実行のためのリソース配分を決める

  • 人・時間・費用を何に使うかを優先順位で整理

  • 「何をやるか」ではなく、「何に注力するか」を明確に


戦略が組織に浸透する条件

戦略をいくら考えても、それが組織全体に浸透しなければ意味がありません。浸透させるには、以下の3つが重要です。

  1. 目的を“共有”する
     戦略の内容よりも、「何のためにやるのか」を全員が理解していることの方が大切です。

  2. 実行レベルに“翻訳”する
     現場が「自分は何をすればよいか」まで具体的にわかるように、目標をブレイクダウンして伝える。

  3. 振り返りと軌道修正の仕組みをつくる
     戦略は完璧にスタートしなくてよい。定期的に進捗を確認し、必要に応じて修正していく柔軟性も必要です。


結論:「なぜそれをやるのか?」からすべてを始めよう

多忙な日々の中では、「とりあえず今できることをやろう」という姿勢に流されがちです。しかし、その一歩を踏み出す前に、「この行動は何のためなのか?」と目的を問うこと。それが、真の戦略思考の始まりです。

すべての施策は、目的から逆算されてこそ意味があります。行き先のわからない船は、どんな風が吹いても迷うばかりです。
あなたの組織の戦略は、目的地に向かっているでしょうか?
それとも、“手段のための手段”になってはいないでしょうか?

いま一度、原点に立ち返ってみることが、組織を未来へ導く第一歩になるはずです。

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MHアドバイザリー株式会社

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