【組織マネジメント100の考え方】#11「組織構造は「目的達成のための手段」である」

― 組織図に答えはない。“目的”が構造を決める ―

経営の現場で「組織づくり」は非常に重要なテーマです。組織図をどう描くか、どこに誰を配置するか、部門をどう分けるかなど、構造的な設計は企業の機能性を大きく左右します。

しかしここで見落とされがちなのが、「組織構造は目的を実現するための“手段”である」という視点です。多くの組織が「過去の慣例」や「他社のやり方」に引きずられて組織をつくってしまい、そもそも「何のためにその構造が必要なのか」という本質的な問いが抜け落ちているのです。

組織構造は、経営の目的、戦略、課題、目指す文化に応じて変わるもの。変えてはいけないのは目的であり、構造はそれに柔軟に合わせて進化させるべきものです。


なぜ「目的から構造をつくる」必要があるのか

たとえば、企業の目的が「顧客満足を最大化すること」であるならば、営業部門とカスタマーサポート部門が縦割りで分断されていては非効率です。むしろ、両者が一体となったチーム編成やプロジェクト制のほうが効果的かもしれません。

また、「新規事業の創出」が目的であれば、階層的な承認フローが重い組織よりも、少人数の自律型ユニットに権限委譲をしたほうがスピードが出ます。

つまり、目的に応じて構造を変えなければ、戦略は実行されないのです。

構造が目的に合っていないと、以下のような問題が起こりがちです:

  • 意思決定が遅い

  • 情報が部門間で滞る

  • 責任の所在があいまい

  • 似たような業務が重複している

  • 社員が全体像を理解できず、迷いが生じる

これらはすべて、「構造が目的に合っていないこと」から生まれる“副作用”です。


組織構造づくりの基本原則

組織構造を目的に合わせて設計するには、いくつかの基本原則を押さえておく必要があります。

1. 【戦略に従って構造を変える】

経営戦略が「拡大・成長型」であれば、階層化や分業化が必要になります。一方、「創造・革新型」であれば、柔軟なプロジェクト型組織やフラットなチーム体制の方が適しているでしょう。

構造は常に、「今、何を達成しようとしているのか」によって柔軟に変えるべきです。

2. 【役割の明確化と責任の所在】

組織構造の本質は「誰が何を担うのか」「誰が責任を持つのか」を明確にすることにあります。これが曖昧なままだと、意思決定のスピードが落ち、責任の押し付け合いが起こりやすくなります。

特に中小企業では「なんとなく全員でやる」文化が残りやすいですが、ある程度の規模になった時点で、明確な機能分化と責任範囲の整理が必要になります。

3. 【情報の流れを意識する】

組織構造を考えるうえで、物理的な配置よりも“情報の流れ”が重要です。情報はどこで生まれ、誰が処理し、どこに伝達されるのか。この流れがスムーズでなければ、優れた戦略も実行されません。

情報の流れを可視化し、それに合わせた構造を組むことで、無駄な会議・報告・承認を減らすことができます。


組織構造の3つの基本タイプとその特徴

① 機能別組織(Function-based)

営業・経理・人事・総務など、業務機能ごとに分けた伝統的な構造。明確な役割分担がしやすく、標準化・効率化に向いているが、縦割り意識が強まりやすい。

向いている組織: 安定期・ルーティン業務中心の組織

② 事業部制組織(Division-based)

製品ごとや地域ごとにユニットを持つ構造。現場判断やスピードが出しやすく、権限移譲もしやすいが、全社的な統一感が薄れやすい。

向いている組織: 複数事業を展開している企業、成長期の組織

③ マトリクス型組織(Matrix-based)

機能軸とプロジェクト軸の両面で組織を管理。柔軟な対応ができ、部門横断型の課題解決に強いが、上司が2人になるなどの混乱も生じやすい。

向いている組織: 創造型企業、イノベーション重視の職場


中小企業・クリニックにとっての「目的ベース構造」とは

中小規模のクリニックや企業においても、「目的から構造をつくる」という発想は極めて有効です。たとえば:

  • 「教育重視の組織を目指す」 → 教育専任ポジションの設置

  • 「患者満足度を重視する」 → 患者対応専属チームの組成

  • 「分院展開に備える」 → 権限移譲と中間管理職の育成体制の導入

このように、「今の組織をどう変えるか」ではなく、「目的にふさわしい構造は何か」というゼロベース思考が、組織の進化を加速させます。


結論:組織構造は“成果の設計図”である

組織構造は、人間の骨格と同じです。どれだけ筋肉(人材)が優れていても、骨格(構造)が歪んでいれば、動きにくく、ケガもしやすくなります。

そして、構造は「つくるもの」ではなく「問い続けるもの」です。「今の構造は、我々の目的を本当に支えているか?」「実行したい戦略に適しているか?」という問いを忘れないことが、強い組織をつくる最大のポイントです。

あなたの組織の構造は、“今の目的”にふさわしい設計になっていますか?
もし違和感があるとすれば、それは変化のサインかもしれません。
組織は、生きています。そしてその構造は、目的によって形を変えていくものなのです。

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