【組織マネジメント100の考え方】#12「明確な役割分担が責任感を生む」

― 人は“自分の場所”がわかっているとき、最も力を発揮する ―

どれだけ理念が素晴らしくても、どれだけ人材がそろっていても、組織の現場でよく起こるトラブルの多くは「役割の曖昧さ」に起因しています。

「それ、誰がやるべきだったの?」
「私がやると思っていなかった」
「結局、いつも同じ人に負担が偏っている」

こうした言葉は、日々の業務の中で頻繁に耳にする“摩擦の兆候”です。そしてこの摩擦が蓄積すると、組織全体のモチベーションとパフォーマンスを確実に下げていきます。

逆に、**役割分担が明確な組織では、メンバーは自分の仕事に誇りを持ち、責任感を持って取り組むようになります。**人は「自分の担うべき領域」がはっきりしているとき、初めて自律的に動けるのです。


曖昧な役割が生む“5つの弊害”

明確な役割分担がない組織では、以下のような問題が発生しやすくなります。

  1. 責任の所在が不明確になる
     何かトラブルが起きたとき、「誰が責任を取るのか」が曖昧になり、対処が遅れる。また、責任の押しつけ合いが発生する。

  2. 業務の“抜け・漏れ・重複”が起きる
     「誰かがやっているだろう」で放置される業務や、同じ仕事を複数人が無駄に担当してしまうなど、非効率な状態に陥る。

  3. チームの信頼関係が崩れる
     特定の人に業務が偏り、「また私か…」という不満が蓄積すると、仲間への信頼が損なわれ、協力体制が弱くなる。

  4. 指示待ち人材が増える
     自分の役割がわからないため、「言われたことだけをこなす」受け身の姿勢になり、自律性が育たない。

  5. 成長の機会が奪われる
     明確な役割と目標がないと、振り返りやフィードバックも曖昧になり、本人の成長につながらない。

これらの課題は、単なる“人の問題”ではなく、“設計の問題”です。つまり、役割を明確に定義し、運用する仕組みを持っているかどうかで、組織の健全性は大きく変わるのです。


「責任感」は、明確な“持ち場”から生まれる

責任感とは、「自分がやらなければならない」という感覚のことです。そしてそれは、上司に叱られたからではなく、「これは自分の役割だ」と納得しているからこそ自然と生まれるものです。

子どもでも、家庭の中で「お風呂掃除はあなたの担当ね」と言われると、不思議と毎日忘れずにやるようになるものです。それは、「自分の居場所」がそこにあるからです。

組織においても同じことが言えます。
「あなたはこの工程の責任者です」
「このタスクの完了はあなたに任せています」
「チームの進捗管理はあなたの役割です」

こうした言葉が日常的に飛び交うチームは、それぞれのメンバーが“自分のポジション”に責任と誇りを持って働いています。


役割分担を明確にする3つの視点

役割分担をうまく機能させるには、以下の3つの視点が必要です。

① 【業務単位】で整理する

まずは、組織に存在する業務をすべて“見える化”しましょう。受付、施術、電話対応、在庫管理、クレーム対応、集計、教育など、どれも「誰がやるのか」が明示されている状態が理想です。

このとき、「チーム全体でやる」業務は、「誰が主導するのか」「誰が最終的な責任を持つのか」まで決めておくことがポイントです。

② 【役割と権限】をセットで定義する

「この業務をやって」と任せるときは、「どこまでの判断権限を持っているか」を必ず明示しましょう。

たとえば、「物品発注を担当する人」に対しては、「月〇円までなら判断してOK」「それ以上は上長に相談」といった“権限の枠”もセットで伝えることで、本人の不安が減り、スムーズな判断と実行が可能になります。

③ 【期待と評価】をリンクさせる

役割が明確になっても、それが評価や成長機会と連動していなければ、やりがいは生まれません。

「あなたにはこの役割を担ってほしい。だから、この点を見て成長を支援していくよ」と伝えることで、役割は“責任”であると同時に“信頼の証”となります。


「役割は1人1つ」とは限らない

役割分担を進めると、「それは私の担当じゃない」「それはあの人の仕事でしょ」と、逆に“縦割り”が強まりすぎるケースがあります。

しかし、現実の組織はもっと柔軟であるべきです。重要なのは、「責任の所在が明確であること」であって、「それ以外はやらなくてよい」という話ではありません。

つまり、役割とは“主担当者を明確にすること”であって、“それ以外の人は関係ない”という線引きではないということです。協力、フォロー、助け合いの文化と、責任分担の明確化は、両立するべきなのです。


現場に「役割認識」を定着させる方法

役割を定義するだけでは定着しません。以下のような方法で、組織に根づかせることができます。

  • 役割カードの作成:スタッフごとに「私の役割」「担当業務」を見える化する

  • 朝礼や会議での共有:日々の業務の中で「これは誰の仕事だったか?」を確認する習慣を持つ

  • 定期的な見直し:環境や人員の変化に合わせて、役割を見直す機会を設ける(半年〜1年ごと)


結論:「あなたの役割はこれです」と伝える勇気

組織運営で最も大切なことの一つは、「曖昧なままにしない」ことです。人間関係に遠慮して、役割分担を明確にしないことは、一見やさしさのようでいて、実は組織を不幸にします。

役割を明確に伝えることは、“責任を押しつける”ことではなく、“信頼して任せる”ことです。
そして、役割が明確になることで、人は自分の仕事に誇りを持ち、責任を自ら引き受けるようになります。

あなたの組織では、「誰が何を担うのか」が明確に言語化されていますか?
そして、スタッフ一人ひとりが「自分の仕事に誇りを持っている」と感じられる環境になっているでしょうか?

役割を整理することは、信頼と責任の文化を育てる最初の一歩です。

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