【組織マネジメント100の考え方】#17「理念を語ることが文化になる」

― 言葉にしなければ、想いは伝わらない。伝え続けて、文化になる ―

多くの経営者が、創業時に情熱を込めて理念を掲げます。
「患者に感動を」「社員の人生を豊かに」「地域と共に成長する」——どれも素晴らしい言葉です。

しかし、月日が経つにつれて、その理念は社内で語られる機会が減っていきます。
理念は社長室の壁に飾られていても、社員は日々の業務に追われ、その意味を忘れてしまっている。
気がつけば、「理念がある」けれど「理念で動いていない」組織になってしまうのです。

理念は掲げるだけでは機能しません。
理念は“語り続ける”ことで、文化として組織に定着します。


理念は“行動を導く言葉”である

そもそも、理念とは何のために存在するのでしょうか?
それは、組織が「どこへ向かうのか」「何を大切にするのか」を、全員で共有するための“行動の道しるべ”です。

人は、忙しくなると目の前の業務に集中し、やることだけが目的になってしまいがちです。
そんなとき、理念があれば「これは何のためにやっているのか」を思い出せる。
迷ったときの判断基準となり、苦しいときの支えにもなる。
理念は、組織の“根っこ”であり、行動をつなぐ“軸”なのです。

しかし、それは“共有されている”という前提があってこそ。
理念は書かれているだけでは意味がなく、“語られて初めて機能する”のです。


なぜ理念は語られなくなるのか?

理念が語られなくなる理由は、いくつかあります。

  1. 「もう伝えたから」と思っている
     一度共有したからOKと思い込んでしまう。

  2. 日常業務が優先される
     忙しさの中で、「理念を語る時間がない」と後回しになる。

  3. 現場がピンときていない
     抽象的すぎて、自分ごととして理解できていない。

  4. 経営者自身が恥ずかしがっている
     「想いを語るのは照れくさい」「押しつけにならないか」と遠慮してしまう。

こうして語られなくなった理念は、徐々に“形骸化”し、現場との間に溝が生まれていきます。


理念を“語る”ことで得られる3つの効果

① 【組織に一貫性が生まれる】

理念に基づいて意思決定や行動を行うと、社員は「なぜそうするのか」が理解でき、一貫性のある判断が可能になります。
組織内の方針・評価・指導がブレにくくなり、迷いが減ります。

② 【現場に“誇り”と“方向性”が生まれる】

理念が語られる組織では、「自分は意味のある仕事をしている」と実感できます。
特に若い社員にとっては、「何のために働いているのか」が明確になることで、やりがいや定着率に大きく影響します。

③ 【組織文化として根づく】

理念が語られ続けることで、それは単なる言葉ではなく、日々の行動や判断の中に染み込んでいきます。
やがてそれが“らしさ”となり、組織独自の文化となっていきます。


理念を“文化”にするための5つの実践方法

1. 【朝礼や会議で語る】

毎週1回でも構いません。理念の一節を引用して、「今日のエピソード」「今週の行動目標」と結びつけて話すことで、理念は“日常”になります。

2. 【具体的な行動とセットで語る】

抽象的な言葉ではなく、「先週、患者さんからこんな言葉をもらった。それはまさに私たちの理念にある“信頼”が形になった場面だった」など、具体的なストーリーと一緒に語ることで、理念が“体験”として浸透します。

3. 【面談や評価の中で触れる】

1on1や評価面談では、「理念に沿った行動ができているか?」という視点を加えるだけで、社員の視点も変わります。

4. 【“語り部”を育てる】

経営者だけが語るのではなく、管理職や中堅社員が自らの言葉で理念を語れるように育てていくこと。
これにより、理念が“共通言語”として社内に広がります。

5. 【新入社員研修で徹底的に伝える】

理念の浸透は、入社時が最も効果的です。初期段階でしっかり語り込み、「なぜこの会社は存在するのか」「どんな価値観を大切にしているのか」を理解してもらうことが、長期的な定着につながります。


組織における“語り”の力

ある病院の理事長が、こんな言葉を語っていました。

「私は、毎日同じような話をしています。でも、それが文化をつくっているんです。」

理念は、語られなければ忘れられます。
語り続けられれば、やがて“考え方”から“行動”へ、そして“文化”へと変わっていきます。

理念を語ることは、経営者やリーダーにとっての“責任”であり、“文化づくりの起点”なのです。


結論:「語り続けること」が、理念を文化に変える

理念はつくるものではなく、「生かすもの」です。
そしてそれは、語ることでしか生きないのです。

あなたの組織では、理念が語られていますか?
掲げただけで終わっていませんか?

最初は照れくさくても構いません。まずは、1人に、1回だけでも伝えてみてください。
その一言が、誰かの行動を変え、やがて組織の文化を変えていくきっかけになるはずです。

理念は、語られてこそ、力を持ちます。
そしてその力こそが、組織を未来へと導く原動力になるのです。

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MHアドバイザリー株式会社

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