【組織マネジメント100の考え方】#24「“理念採用”で文化に合う人材を引き寄せる」

― スキルではなく、“価値観の一致”が人と組織をつなげる ―

「すごい経歴の人を採ったのに、なぜか合わなかった」
「仕事はできるけど、チームの空気が悪くなる」
「人柄はいいけど、うちの仕事にはなじまない」

採用において“能力”や“経験”だけを重視すると、こうしたギャップに直面することが少なくありません。
そしてこのギャップは、スキルの違いではなく、“価値観の違い”=理念とのズレによって生まれるのです。

逆に、多少スキルが未熟でも、価値観が一致していれば、人は自然と成長し、組織になじみ、長く貢献してくれます。
それが、「理念採用」という考え方です。


理念採用とは何か?

理念採用とは、「自社の理念や価値観に共感できるかどうか」を採用の判断基準とすることです。
スキルや経験だけでなく、その人の“人柄”や“考え方”、“仕事に対する姿勢”を重視します。

このアプローチでは、

  • 「うちの組織はどんな価値を大切にしているか」

  • 「この人は、その価値観を共有できるか」

を見極めることを重視します。


なぜ理念採用が重要なのか?

① 【文化との“フィット感”が働き方を決める】

価値観が合わない職場では、いくら能力が高くてもストレスがたまり、パフォーマンスが下がります。
逆に価値観が合うと、たとえ経験が浅くても自律的に動けるようになります。

② 【“理念に沿った行動”が判断基準になる】

理念に共感している人は、「この場面でどう振る舞うべきか」を自分で考えられます。
マニュアルではなく、“価値観”で動く組織になることで、現場の判断スピードと一貫性が向上します。

③ 【離職率が下がる】

理念に共感して入った人は、「多少の困難があっても、ここで頑張りたい」と思えます。
「この組織で働くこと自体が、自分にとって意味がある」と感じているため、定着率が高くなります。


理念採用を成功させるための3つの前提

1. 【まずは理念が“言語化”されていること】

「理念採用」とは言っても、そもそも理念が曖昧だったり、形だけ掲げられていたりしては意味がありません。
まずは、「私たちはなぜこの仕事をしているのか?」「何を大切にしているのか?」という問いに、言葉で明確に答えられる必要があります。

2. 【現場のふるまいと理念が一致していること】

理念と現場の行動がズレていると、入社後に「聞いていた話と違う」となってしまいます。
「理念に沿ったふるまい」が日常に浸透しているからこそ、理念に共感した人が本当に活躍できる環境になります。

3. 【採用プロセスで“語る場”があること】

面接で条件ばかり説明していては、価値観は伝わりません。
むしろ、「この組織はなぜ存在しているのか?」「この職場では何を大切にしているのか?」を、経営者やマネージャーの口から、しっかり伝える場が必要です。


理念採用の実践ステップ

ステップ1:求める人物像を“理念ベース”で定義する

「うちで活躍している人って、どんな考え方を持っているか?」を話し合い、言語化します。
たとえば:

  • 素直に学ぼうとする人

  • 小さなことにも責任を持てる人

  • 仲間の成功を喜べる人

これらを基に、「理念に共感する人とは、どんな人か?」の人物像を明確にします。

ステップ2:採用ページに“価値観”を明記する

単なる業務内容や条件だけでなく、「どんな思いで事業をしているか」「どんな人と働きたいか」などを文章にして公開します。

たとえば:

  • 私たちは“感動を届ける医療”を目指しています

  • 「ありがとう」と言われることに喜びを感じられる方を歓迎します

  • 一緒に働く仲間を大切にできる人と働きたいです

これにより、“理念に共感する人材”を自然と引き寄せることができます。

ステップ3:面接で価値観の一致を確認する

「共感」を引き出すためには、質問の設計も重要です。

  • あなたが働く上で大切にしていることは何ですか?

  • 過去に嬉しかった仕事のエピソードは?

  • 自分の仕事で誰にどんな影響を与えたいですか?

こうした質問に対する答えの中に、その人の“価値観の核”が現れます。


理念採用は“未来の文化”をつくる投資

人は組織に“合わせる”ことはできても、“変わる”ことは難しい。
だからこそ、「合う人を最初から採る」ことが、最も確実で、長期的な育成コストを抑える方法でもあります。

理念に共感して入ってきた人は、理念を行動に移し、理念を語り、理念を引き継ぐ人になります。
つまり、理念採用を繰り返すことが、組織文化を強固にし、未来をつくっていくのです。


結論:理念に共感する人は、必ず育つ

人の能力は変わる。
スキルは磨かれる。
でも、「価値観」だけは、簡単には変わらない。

だからこそ、採用の基準を“共感できるかどうか”に置く。
この視点が、採用の質を変え、組織の文化を変え、業績を変えていきます。

あなたの組織では、「理念に共感して入った人」が何人いますか?
そして、理念が語られ、伝わり、受け継がれていますか?

理念採用は、今いる人を幸せにする。
そして、これからの組織の未来を守る、一番確かな採用のあり方です。

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MHアドバイザリー株式会社

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