― 言葉よりも、関係が人を動かす ―
「改善点を伝えても、反応が薄い」
「素直に受け止めてもらえない」
「指摘したら、むしろ関係が悪くなった」
リーダーや上司として、フィードバックをする場面は少なくありません。
しかし、その“伝え方”や“受け止められ方”には、大きな差があります。
そして、その差を生み出しているのは、「言葉」ではなく「信頼関係」です。
フィードバックは、信頼関係の上にしか成り立たない。
本当に人を動かす言葉は、「何を言ったか」より「誰が言ったか」によって効力が決まるのです。
フィードバックとは「関係性をベースにした対話」
よくある誤解は、「フィードバック=指摘」だというものです。
しかし、実際のフィードバックとは、
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相手の成長を願い、
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行動の結果に対して、
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建設的な視点を共有する行為
であり、「正す」ことではなく「伸ばす」ためのコミュニケーションです。
そのためには、まず「この人は自分の成長を本気で願ってくれている」と思ってもらえる関係性が必要です。
なぜ信頼がなければフィードバックは効かないのか?
1. 【人は“敵”からの言葉をシャットアウトする】
信頼関係がないと、どんなに正しいことを言っても「攻撃された」「否定された」と感じてしまいます。
心理的防衛が働き、耳では聞いていても、心では受け止めていないのです。
2. 【信頼していない相手には“意図”が伝わらない】
「何が正しいか」ではなく、「誰が言ったか」がフィードバックの印象を左右します。
同じ言葉でも、「この人の言うことなら信じられる」と思えるかどうかで、全く違う意味になります。
3. 【関係性がなければ、“本音の対話”ができない】
本来のフィードバックは、「伝える」だけでなく「一緒に考える」対話です。
信頼があれば、「どうしたらもっとよくなるか?」という前向きな議論ができます。
信頼がなければ、ただの“ダメ出し”にしかなりません。
フィードバックが機能する組織の共通点
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普段から上司が“聴く姿勢”を持っている
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感謝や承認の言葉が日常的に交わされている
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ミスを責めるのではなく、学びの機会として捉える文化がある
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「育てるための言葉」が習慣として根づいている
このように、「言葉の技術」よりも「文化としての信頼」が整っていることが重要です。
信頼関係を前提にしたフィードバックの4ステップ
ステップ1:まず“承認”から入る
いきなり指摘から入るのではなく、「まず何がよかったか」を言語化します。
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「あの対応、すごく丁寧だったね」
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「前回よりも工夫していたのが伝わったよ」
こうした言葉があることで、「ちゃんと見てもらえている」という安心感が生まれ、次の言葉に耳を傾けられる状態になります。
ステップ2:客観的な事実に基づいて伝える
「〇〇がダメだった」ではなく、「この場面で、こういう対応が見られた」という行動の描写を心がけます。
例:
×「全体的に雑だった」
〇「患者さんとのやりとりの中で、2回名前を呼び間違えていたよ」
事実を丁寧に切り出すことで、「攻撃」ではなく「観察」であることが伝わります。
ステップ3:意図を共有する
「なぜそのフィードバックを伝えるのか」「どんな期待があるのか」を言葉にします。
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「もっと成長できると思うからこそ、伝えたい」
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「この点が改善されれば、さらに活躍できると思ってる」
“期待の裏返し”として伝えることが、相手の心に届く鍵です。
ステップ4:一緒に改善策を考える
伝えて終わりではなく、「どうすれば改善できそうか?」を一緒に考えることで、
フィードバックは“指摘”から“伴走”に変わります。
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「じゃあ、次回はこうしてみようか」
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「どうすればやりやすくなりそう?」
このプロセスが、信頼と行動の変化を生みます。
NGなフィードバックの典型例
| NGフィードバック | 問題点 |
|---|---|
| 「もっとしっかりして」 | 抽象的で行動に結びつかない |
| 「何度言えばわかるの?」 | 感情的になり、信頼を壊す |
| 「なんでこんなこともできないの?」 | 相手の尊厳を傷つける |
フィードバックは「行動に注目し、人格を否定しない」が大原則です。
フィードバックを“文化”にするために
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日常の中でこまめに「よかった点」を伝える
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成長のために意見を伝え合う“対話の時間”を定期的に持つ
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上司も部下からフィードバックを受ける
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ミスや指摘を“学び”として歓迎する空気をつくる
これらを習慣化することで、「言いにくいことを言い合える関係性」=本物のチームが育ちます。
結論:信頼のないフィードバックは、ただの“押し付け”になる
どんなに正しいことを言っても、信頼がなければ伝わらない。
どんなに厳しいことでも、信頼があれば受け止められる。
あなたが伝える言葉が届いているかどうかは、
その前の“関係づくり”にかかっています。
「この人になら言われたい」
「この人の期待には応えたい」
そう思ってもらえる関係性を、日々の中で築けているか?
それこそが、すべてのフィードバックの“前提”であり、“効果”を決める要因です。
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MHアドバイザリー株式会社
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