【組織マネジメント100の考え方】#39「“理念”は“実践で示すもの”である」

― 理念が現場に浸透しないのは、言葉だけだから ―

「理念はあるが、スタッフに浸透していない」
「掲げていることと、実際の行動が一致していない」
「毎朝唱和しているが、意味が形骸化している」

こうした悩みは、あらゆる業種・業界の経営者やマネージャーから聞かれます。
経営理念やミッションは、組織の“羅針盤”であり、本来であればすべての判断と行動の根幹になるべきものです。
しかし、現実には「理念は掲げて終わり」「現場との温度差がある」状態が多く見られます。

理念は語るものではありません。実践を通して示すものです。
本記事では、理念が現場に根づくために必要な考え方と、具体的な行動について解説します。


理念が浸透しない理由は「言葉だけ」にある

理念が浸透しない原因の多くは、以下のような構造的な問題にあります。

1. 言葉が抽象的で、解釈が人によって異なる

例:「お客様に感動を」→ どうやって?どのレベルで?何をもって感動?

2. 上司が日々の行動で理念を示していない

言葉では「信頼を大切に」と言いながら、報連相を遮る上司。
「挑戦を重んじる」と言いながら、失敗を許さない文化。
“理念と現実のギャップ”が信頼を壊しているのです。

3. 理念が“判断基準”として使われていない

理念が「壁に貼られた装飾」になっており、意思決定や人材評価、行動の基準に落とし込まれていない。


理念を“実践で示す”とはどういうことか?

理念を実践するとは、日常の中で「その価値観に基づいて判断し、行動すること」です。
つまり、「理念に沿ったふるまい」が具体的に行動に表れている状態を指します。

たとえば:

  • 「患者第一主義」という理念
    → 忙しくても患者の目線にしゃがんで話すスタッフ
    → 説明が伝わったかどうかを丁寧に確認する姿勢

  • 「共創」という理念
    → 部署を越えて課題解決に取り組むプロジェクトがある
    → 他部署の成功を称賛する文化がある

このように、「行動として体現されているかどうか」こそが理念の本当の浸透レベルです。


理念を“実践で示す”ための5つのアクション

1. 【まず、経営者・リーダーが体現する】

どれだけ立派な言葉を掲げても、上司の行動がそれと矛盾していれば、現場は絶対に動きません。

  • 理念に沿った判断をしているか?

  • 苦しい場面でも、理念を優先できているか?

  • 失敗を責めるより、挑戦を称賛しているか?

「この人がやっているから信じられる」
そう思われるリーダーの姿勢が、理念浸透の起点です。

2. 【理念を“言語化し直す”】

抽象的な理念は、「自分たちの言葉」で言い換えることで行動に落ちます。

  • 「感動を与える」→「来院時と帰院時で笑顔の変化をつくる」

  • 「チームワークを大切に」→「困っている人に1日1回声をかける」

現場が理解し、行動に移せる言葉に“翻訳”することが重要です。

3. 【行動評価や面談に組み込む】

理念をただ“唱和”するだけでなく、「理念に沿った行動があったか」を定期的に振り返る。

  • 評価項目に「理念への共感と行動」を加える

  • 1on1で「最近、理念に沿った行動で心が動いたことは?」と問う

  • 朝礼で「昨日、理念が表れていた場面」を共有する

“理念ベースの会話”が増えれば、理念は息を吹き返します。

4. 【理念に反する行動は見逃さない】

浸透しない最大の要因は、“理念違反”に対して沈黙してしまうことです。

  • 部下が他者を否定しても黙認

  • 顧客より自分の都合を優先してもスルー

小さな違反を放置することが、理念を“形だけ”にしてしまう最大のリスクです。

5. 【“成功体験”を共有する】

「理念を行動に移したことで、うまくいった」「顧客に喜ばれた」など、
理念の力を“実感”として共有する場をつくることが大切です。

成功事例が「行動のモデル」となり、メンバー全体に広がります。


理念が現場を変えると、組織の軸が生まれる

理念が実践されるようになると、以下のような変化が起きます:

  • 判断に迷いがなくなる

  • チーム内でのブレがなくなる

  • 採用や評価の基準が明確になる

  • 単なる業務に“意味”が加わる

つまり、理念が「自分たちはなぜこの仕事をしているのか」を日々思い出させる装置になるのです。


結論:理念は語るものではなく、“生きた判断軸”である

理念が浸透するかどうかは、「言葉の強さ」ではなく、「行動の一貫性」にかかっています。
掲げているだけの理念は、むしろ現場の信頼を失わせます。

  • 行動しているか?

  • 判断しているか?

  • 他者に伝えているか?

  • 難しい場面で理念を優先しているか?

それが、「理念がある」と言える唯一の条件です。

今日、あなたの行動は理念を体現していましたか?
チームの誰かが、「その姿勢に勇気をもらいました」と言ってくれるような、理念に基づいたふるまいをしていますか?

理念は“掲げるもの”ではありません。
日々の中で、静かに、力強く、“行動として示すもの”なのです。

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MHアドバイザリー株式会社

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