【組織マネジメント100の考え方】#42「“定着率”は“オンボーディング”で決まる」

― 入社から3か月間の設計が、未来の戦力をつくる ―

「ようやく採用できたのに、すぐに辞めてしまった」
「“思っていた職場と違う”と言われて退職された」
「新人が現場に馴染めず、孤立してしまっている」

こうした“定着”の問題は、採用以上に深刻な経営課題です。
なぜなら、採用にかけたコスト・時間・労力が“定着しない”ことで全て水泡に帰してしまうからです。
そしてその原因の多くは、“オンボーディング(受け入れと定着の仕組み)”の不備にあります。

オンボーディングとは、入社後の最初の90日間をどう設計するか、という戦略的プロセス。
この期間をどう過ごすかで、その人の未来はほぼ決まると言っても過言ではありません。


「採用成功」とは、入社ではなく“定着”までを指す

採用はゴールではなく、スタートラインにすぎません。
入社してから定着し、戦力として活躍して初めて、「採用に成功した」と言えるのです。

逆に言えば、どれだけ条件が良くても、どれだけ理念が素晴らしくても、
最初の数ヶ月で「居場所がない」「理解されていない」「期待されていない」と感じたら、人は辞めます。

だからこそ、「入社からどう迎えるか」の設計が、組織の持続的な成長に直結するのです。


オンボーディングが不十分な組織で起こること

  • 新人が何をすればよいかわからず、戸惑う

  • 「質問しにくい」「相談できない」空気がある

  • 指導者の当たり外れで、育成に差が出る

  • 教育が感覚任せで、進捗管理ができない

  • 上司や先輩が忙しく、放置状態になる

  • 早期離職が続き、組織に“あきらめムード”が漂う

これらは、全て“仕組み”ではなく“属人性”に頼った結果です。


定着率を高めるオンボーディング設計の5つの柱

1. 【初日から“組織の一員”として迎える】

最初の印象は決定的です。

  • 事前に名前入りの机・名札を用意

  • 全員での歓迎の言葉や紹介タイム

  • 組織の理念やビジョンを共有する場の設定

「ここに来てよかった」「大切にされている」と感じてもらえることで、最初の不安は大きく和らぎます。

2. 【業務以外の“人間関係づくり”を支援する】

新人の離職理由として多いのが「人間関係の不安」です。
仕事を覚えること以上に、“誰に聞けばいいか”“話しやすい人がいるか”が重要です。

対策例:

  • バディ制度の導入(年齢の近い先輩が伴走)

  • ランチ交流・雑談タイムの設定

  • 新人同士のつながりをつくる機会の提供

心理的安全性があってこそ、行動と学びが促進されます。

3. 【明確な育成ステップとマイルストーンを提示】

「この1ヶ月で何をできるようになるか」「評価のポイントは何か」が不明確だと、不安とモヤモヤが募ります。

チェックリストやステップシートを活用して、

  • “何ができたら一人前か”

  • “いつ、何を習得すればよいか”
    を見える化することで、育成の質とスピードが上がります。

4. 【定期的な1on1とフィードバックの設計】

週1回、15〜30分でもよいので、「何に困っているか」「どう感じているか」を確認する対話の時間をつくることが必要です。

  • 「できたこと」「嬉しかったこと」も言語化させる

  • 「改善点」より「成長点」にフォーカスする

  • 小さな承認を積み重ねる

これにより、本人の自己認識が高まり、自信をもって次の行動に移れます。

5. 【“オンボーディングの責任者”を明確にする】

よくあるのが、「誰が育てるのかが曖昧」な状態です。
上司・先輩・人事がバラバラに関わっており、情報共有やフィードバックが滞ります。

  • メイン担当者を設定

  • 育成報告書や面談記録で情報共有

  • 責任の所在を明確にする

こうすることで、“属人化”せずにチームで育成ができる仕組みが整います。


「3か月の投資」が、「3年の活躍」を生む

「もう大人なんだから、すぐに仕事になじんでほしい」
「丁寧に教えている余裕がない」
そのように考えてしまいがちですが、最初の3か月を“伴走”できなければ、その人の戦力化は遅れ、離職のリスクが高まります。

逆に、「この会社は人を大切にする」「ここで成長できそう」と感じた新人は、圧倒的なスピードで育ち、長く貢献してくれるようになります。


結論:“定着率”は、採用の後に決まる

採用成功のカギは、「誰を採るか」よりも、「どう迎えるか」にあります。
そのために必要なのは、“優秀な教育者”ではなく、“優れた仕組み”です。

あなたの組織では:

  • 新人が安心して成長できる受け入れ体制がありますか?

  • 育成プロセスを仕組み化し、誰が見ても分かる状態にできていますか?

  • 「ここに来てよかった」と言ってもらえる初期体験を設計していますか?

定着は偶然ではなく、設計によって生まれるものです。
オンボーディングを整えることが、組織の未来を変える第一歩なのです。

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MHアドバイザリー株式会社

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