― 理念は“飾るもの”ではなく“見直して育てるもの” ―
多くの企業や医療機関が、ミッション(使命)、ビジョン(将来像)、バリュー(価値観)を掲げています。これらはいわば「組織の羅針盤」であり、どこへ進むか、なぜ存在するか、何を大切にするかを示すものです。
しかし、それらの理念が「額縁に飾られているだけ」になっていないでしょうか。最初は情熱を込めて作られた言葉も、時が経つにつれて日常業務に埋もれ、社員にとっての“ただのスローガン”になってしまっているケースは少なくありません。
本来、ミッション・ビジョン・バリュー(以下、MVV)は“決めたら終わり”ではなく、“定期的に再確認し、アップデートしていくもの”です。組織が変化し続けるのと同じように、MVVもまた、組織の現在地や目指す姿に合わせて見直す必要があります。
MVVが「形骸化」してしまう3つの理由
まず、なぜMVVが現場で機能しなくなるのか。その主な理由は以下の3つです。
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作成後に言及されなくなる
一度策定しただけで、それ以降は誰も触れない。会議や面談、日常の業務でMVVが話題に上がらなければ、社員にとっては“存在しないも同然”です。 -
業務とリンクしていない
MVVがあるにもかかわらず、目標管理や評価、日常の判断に全く使われていない場合、社員は「理念と現実は別」と感じてしまいます。 -
時代や組織の変化に合っていない
創業時の理念が、現在の事業内容や規模と合わなくなっている場合、その言葉に“リアリティ”が感じられず、共感が得られません。
これらの状態が続くと、MVVは「トップが自己満足で掲げている言葉」と受け取られ、むしろ組織内に“白け”を生む原因となってしまいます。
定期的なMVVの再確認がもたらす3つの効果
MVVを定期的に見直すことで、組織は次のような効果を得られます。
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組織の方向性を再認識できる
日々の業務に忙殺されていると、誰もが「なぜこの仕事をしているのか」を忘れがちになります。理念を再確認することで、自分たちの存在意義や進むべき方向を再び明確にできます。 -
社員との対話が生まれる
MVVの見直しは、トップダウンではなく「全社員参加型」で行うことで、理念に対する共感と当事者意識が高まります。これは組織文化の強化にもつながります。 -
組織文化と実態のギャップを埋める
理想と現実にギャップが生まれていないかを確認し、必要に応じて価値観や行動指針を調整することで、理念が現実と一致する“生きた言葉”に変わります。
MVVを再確認するためのステップ
では、具体的にどうやってMVVを再確認すればよいのでしょうか。以下のステップが効果的です。
ステップ1:現状を振り返る
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組織は今、どんな状況にあるのか?
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当初掲げたMVVと、現在の組織活動に乖離はないか?
この問いを通じて、理念と現場のリアリティをすり合わせます。例えば、「患者満足度を最優先」と掲げているのに、実際には業務効率や利益を優先した運営になっていないか、などです。
ステップ2:社員の声を集める
MVVの再定義は、経営陣だけで行うのではなく、現場の声を集めて行うことが重要です。アンケートやワークショップを通じて、「自社の理念に共感できているか」「もっとこうあるべきだと思う点は何か」など、率直な意見を集めます。
ここで得られる“現場の言葉”は、理念を具体化し、言葉に血を通わせる大切な材料となります。
ステップ3:言語をアップデートする
時代や世代に合った表現に書き換えることも必要です。例えば、「お客様第一主義」といった古い言葉を、「お客様と共につくる価値」と表現し直すだけでも、社員の理解度や行動が変わることがあります。
理念は“変えてはいけないもの”ではなく、“守るべき本質を保ちつつ、伝え方を変えるもの”です。
ステップ4:仕組みに組み込む
見直したMVVを浸透させるには、それを日常業務に組み込む必要があります。
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朝礼や会議での言及
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評価制度への連動
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採用・教育における価値観共有
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スタッフの「バリュー体現」を称賛する文化の醸成
MVVを業務の“そば”に置くことで、理念は初めて現場で機能し始めます。
“一貫性”のある組織こそ、信頼される
MVVを定期的に見直し、現場と共有し続けている組織は、一貫性があります。言っていることとやっていることが一致しているため、社員の信頼感が高まり、組織の強度が上がります。
逆に、理念と行動が乖離している組織は、いくらきれいなビジョンを語っていても、外部にも内部にも“不信”を生みます。スタッフの定着率や患者・顧客からの評価にも、そうした違和感は確実に表れてきます。
一貫性は組織ブランドの核です。そのために、MVVは“今の自分たちにとって本当に正しい言葉か?”を定期的に問い続けることが必要なのです。
結論:理念は“育てる”もの
ミッション・ビジョン・バリューは、作った瞬間に完成するものではありません。むしろ、組織の成長と共に、何度も問い直され、磨かれ、再定義されるべきものです。
そのプロセスを通じて、理念は“経営者の言葉”から“社員みんなの言葉”へと進化していきます。理念が現場で語られ、行動に落とし込まれたとき、組織は本当の意味で“理念経営”に入っていきます。
飾るための言葉ではなく、未来をつくる言葉として。
理念を“更新”し、“体現”し、“共有”し続けること。
それが、変化の時代において、揺るがぬ組織を築く本質です。
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