【組織マネジメント100の考え方】#14「中間管理職の育成が中長期の鍵」

― 組織は、現場を動かす“橋渡し”で決まる ―

どれほど理念が明確でも、戦略が優れていても、それを現場で実行に移す人材がいなければ、組織は動きません。経営者がいくら声を上げても、その声が現場に届かない。現場で起きている問題が、上に正しく伝わらない――。この“断絶”を解消するのが、中間管理職です。

中間管理職(ミドルマネジメント)は、経営と現場の“翻訳者”であり、“推進者”です。
しかし、現実には「プレイヤーの延長」でリーダーになっただけで、役割やスキルを体系的に学ぶ機会がなく、悩みながら手探りでマネジメントに取り組んでいる人がほとんどです。

そして、多くの組織はこの中間層の育成を後回しにしています。
実はこの「中間管理職の育成」が、組織の成長と安定において最も“見えにくく、だが最も重要な投資”なのです。


なぜ“ミドル層”の育成が後回しになるのか

経営者の多くが、こう語ります。

  • 「中間層にもう少ししっかりしてほしい」

  • 「管理職が自分で考えて動いてくれない」

  • 「上と下の板挟みになって、潰れそうだと嘆いている」

しかしその一方で、「では中間層に対して、どんな教育機会を設けてきたか?」と問うと、答えに詰まるケースも少なくありません。

育成が後回しになる主な理由は以下の通りです:

  1. “プレイヤー”から自然に移行すると思っている
     実務能力が高い人がそのままマネジメントできると誤解されがち。

  2. 教育の優先順位が低い
     新人教育やトップ層の戦略研修に比べ、ミドル層は「中途半端な立場」として見過ごされやすい。

  3. 育成の方法がわからない
     現場のリアルに即したマネジメント教育の体系が整っていない。

結果的に、ミドル層は現場と上層部の間で疲弊し、離職リスクも高くなります。そしてこの“中間の機能不全”こそが、組織の成長スピードを鈍化させる最大の要因なのです。


中間管理職が果たすべき3つの役割

中間管理職には、プレイヤーにはない「組織を動かす」ための役割が求められます。主に以下の3点が重要です。

① 【方針の“翻訳者”】

経営者や本部が掲げる理念・戦略・数値目標を、「現場でどう実行するか」に落とし込む役割です。

例:
「売上10%アップ」→「来月からカウンセリング提案件数を1日1件増やそう」
「定着率の向上」→「新人への声かけを毎日3回以上行うルールをつくる」

抽象的な方針を“行動言語”に翻訳できる力が、ミドルの影響力になります。

② 【現場の“代弁者”】

現場で起きている声・問題・課題を、経営者や上司に“要約して伝える”役割です。単なる不満や感情ではなく、背景と要因を整理し、「どうすれば改善できるか」まで提案できることが望ましい。

これにより、現場の声が戦略に反映され、経営の意思決定も精度を増します。

③ 【人を育て、チームを支える“支柱”】

メンバーの状態を把握し、悩みに寄り添い、育成し、チームとして機能させる役割です。単に指示を出すのではなく、“信頼される存在”としてメンバーを支えることが求められます。


中間管理職育成で必要な5つのスキル

  1. コミュニケーション力
     上と下の橋渡しをするための「聞く力・伝える力」が必須です。

  2. フィードバックスキル
     人を責めずに、行動改善につなげる建設的な伝え方を学ぶ必要があります。

  3. 目標管理(MBO)力
     メンバーに具体的な目標を設定し、進捗を管理する力。数値化と行動への分解スキルが重要です。

  4. 業務改善力
     現場で起きている非効率や問題を発見し、仕組みで改善していく思考。

  5. エンゲージメントマネジメント力
     メンバーが仕事に“前向きに関わる”ための動機づけや関係性構築の力。

これらは、プレイヤーとして成果を出してきた人には“自然には身につかない”スキルです。だからこそ、計画的な育成プログラムが必要なのです。


育成の第一歩は「役割と期待の明確化」

中間管理職を育てたいなら、まずは**「あなたに何を期待しているのか」を言語化して伝えること**がスタートです。

  • 「あなたには部下育成を任せたい」

  • 「経営者の考えを現場に届ける役割だ」

  • 「数値をつくる責任と、人を支える責任を両方持ってほしい」

こうしたメッセージがあることで、本人は初めて“自分の役割”を認識し、そこに向かって成長しようという意欲が芽生えます。

役職名を与えることよりも、“役割”と“責任”を明確に伝えることが先なのです。


中間層が育つことで、組織は「自走」する

組織が一定の規模を超えると、経営者がすべてに目を配ることは不可能になります。そのときに、「信頼できる中間層」がいるかどうかで、組織のスピードも、文化の質も、大きく変わってきます。

  • 「部下のことなら、〇〇さんに任せていれば安心」

  • 「チームの温度感は、〇〇が見てくれている」

  • 「経営者の意図は、〇〇が現場に伝えてくれる」

こうした“信頼できる中間層”が1人、2人と育つことで、組織は経営者依存から“自走型”組織へと進化します。
これは、採用や売上以上に価値のある“組織資産”なのです。


結論:現場を動かす“キーマン”を育てよ

中間管理職は、組織において最も難しく、最も報われにくい立場かもしれません。
上司からのプレッシャー、部下からの不満、その間で孤独を感じている管理職は少なくありません。

だからこそ、育成が必要なのです。
「あなたは組織のキーマンだ」と伝え、「そのための学びと支援を惜しまない」と約束する。
これが、組織全体の信頼と前向きなエネルギーを生み出します。

経営者一人で動かす組織には限界があります。
ミドルが育ち、現場を動かせるようになったとき、初めて組織は「人で回る仕組み」を持つことになります。

いま、あなたの組織には、“現場を動かせる人”がいますか?
その人を、どう育てていますか?

中間管理職の育成こそが、組織の“中長期の成長”を左右する最大の鍵なのです。

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