― 「間違っても大丈夫」と思える職場が、組織を強くする ―
「新しいことに挑戦してほしい」「気づいたことはどんどん改善提案してほしい」
そう考える経営者やマネージャーは多いはずです。しかし現実には、「言われたことだけをやる」「何かあっても黙っている」そんな“受け身の組織”になってしまっているケースも少なくありません。
なぜ人は、提案をやめ、沈黙し、動かなくなるのでしょうか?
それは、「何を言っても、何をやっても安全だと思えない」からです。
今、世界中の注目を集めるキーワードに「心理的安全性(Psychological Safety)」があります。これは、「このチームでは、自分の考えや失敗を安心して話せる」と思える状態のことです。
この心理的安全性が高い組織ほど、挑戦が生まれ、学びが生まれ、改善が積み重なるのです。
「正解よりも沈黙」が選ばれる職場
心理的安全性が低い組織では、以下のような空気が漂っています:
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「こんなこと言ったら怒られるかも」
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「提案してもどうせ通らない」
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「間違えたら責任を取らされる」
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「上司は否定ばかりしてくる」
このような職場では、たとえ社員がアイデアや疑問を持っていても、それを言葉にしなくなります。
そしてやがては、「何も言わないほうが楽だ」「言われたことだけやっていればいい」と思うようになります。
こうして、組織は“挑戦しない文化”へと静かに変わっていくのです。
心理的安全性=“ぬるさ”ではない
誤解してはいけないのは、心理的安全性とは「何をしても怒られない」「甘やかす文化」ではないということです。
むしろ逆で、**「本気の対話ができる関係」「建設的な議論ができる風土」**のことです。
心理的安全性が高い組織では:
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意見の違いを歓迎し合える
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上司に対しても「それは違うと思います」と言える
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失敗しても「それで学んだことは何?」と対話できる
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新人が「わかりません」と堂々と言える
つまり、“人間関係の信頼”と“目的に向かう対話”が両立している状態なのです。
心理的安全性が生む3つの価値
①【挑戦の増加】
「失敗しても大丈夫」と思えることで、人はリスクを取った行動ができるようになります。これは、特に若手や新任社員にとって重要です。
「やってみなさい」と言われても、“失敗を許容する文化”がなければ、実際には行動できません。
②【改善提案の活性化】
現場には、経営者が見えていない無数の気づきがあります。しかしそれが共有されるには、「言っても大丈夫」という空気が必要です。
心理的安全性のある組織では、「もっとこうした方がいい」「これは無駄では?」といった声が自然とあがり、小さな改善が積み重なります。
③【離職率の低下】
職場で“受け入れられている”と感じることは、働き続ける上での最も重要な要素の一つです。
「話を聞いてもらえる」「失敗を責められない」「居場所がある」と感じられる職場は、安心して働ける場になります。
心理的安全性を高める5つの実践方法
1. 【否定ではなく「まず受け止める」】
部下やメンバーから意見が出たとき、最初に「でも」「違うよね」と否定する癖をやめましょう。
まずは「ありがとう」「そう考えたんだね」と受け止めたうえで、必要があれば補足や対話を続ける。この“受け止めのひと言”が空気を変えます。
2. 【「わからない」と言えるリーダーになる】
上司が「それはわからないから、一緒に考えよう」と言えること。
「すべてを知っている」「答えを持っている」ふりをやめたとき、部下は「自分も発言していいんだ」と思えるようになります。
3. 【フィードバック文化をつくる】
心理的安全性がある組織では、**「指摘=攻撃」ではなく「成長のための対話」**として扱われます。
そのためには、日頃から「良かった点」「改善点」をセットで伝える習慣を持つことが大切です。
4. 【質問で場を開く】
「何か質問ありますか?」ではなく、具体的に「今回のミーティングで、納得できなかった点は?」「現場で困っていることは?」と尋ねることで、“声を出しやすい場”ができます。
5. 【雑談・オフの対話も大事にする】
信頼は業務の場だけでは生まれません。ランチ、移動中、朝のひとこと。こうした“雑談”が人間関係をつくり、業務の対話の質も上げていきます。
安心感が「本音」を引き出し、「創造性」を生む
Googleの生産性調査でも、最も高い成果を出しているチームに共通していたのは、「心理的安全性が高いこと」だったと言われています。
これは偶然ではありません。
人は、“守られている”と感じたときに、初めて本音を出します。
本音が出せるから、創造性が生まれます。
創造性があるから、組織は成長します。
すべての始まりは、「ここでなら、安心して自分らしくいられる」と思えること。
それが、心理的安全性という土台なのです。
結論:「安心して間違えられる」組織が、一番強い
どんなに立派な理念を掲げても、どれだけ精緻な戦略を練っても、人が「怖くて発言できない」「ミスしたら責められる」と感じている組織は、停滞します。
逆に、「失敗しても学べばいい」「あなたの声が必要だ」と言ってくれる組織には、人が集まり、行動が生まれ、変化が起きます。
それは、個人の能力よりも、文化の力です。
そしてその文化は、経営者やリーダーの“日々の言動”によってつくられていきます。
今、あなたの組織には「声が届く空気」がありますか?
誰もが、安心して自分の意見を出せる場になっていますか?
挑戦と改善は、“安心”の上にしか育ちません。
心理的安全性こそが、変化の時代に求められる最強の土台なのです。
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