― 人は“教えた通り”ではなく、“育った環境の通り”に育つ ―
「丁寧に教えているのに、なかなか育たない」
「何度も伝えているのに、同じミスを繰り返す」
「そもそも指導に時間をかけられない」
こうした悩みは、現場の教育担当者や経営者にとって日常的な課題です。
しかし、多くの組織が見落としているのが、「育成=教えること」ではないという本質です。
人は、言われた通りには動きません。見た通りに動きます。
つまり、教える内容以上に、「どんな環境で育ったか」が、成長を左右するのです。
育成とは、知識を詰め込むことでも、技術を教えることでもなく、“育ちやすい土壌”を用意すること。
本記事では、「育てようとする前に、育つ環境を整える」ための視点と仕組みを解説します。
育成がうまくいかない組織の3つの特徴
① 教える人によって内容や方法がバラバラ
OJTが属人的で、誰に教わるかで育成の質が変わる。基準が明確でないため、教える側も「何をどこまで教えるべきか」が曖昧。
② 現場に“見本となる行動”が少ない
言っていることと、やっていることが違う。「マニュアルではこう言ってるけど、現場では誰もやっていない」という矛盾が多く、新人が混乱する。
③ ミスをすると怒られる文化
失敗を学びと捉えるのではなく、「できないこと」を責める空気がある。結果、委縮して挑戦できず、成長スピードが遅くなる。
こうした組織では、どれだけマニュアルや教育研修を充実させても、人は育ちにくいのです。
“教え方”より、“育ち方”を設計する
人材育成において、本当に重要なのは「何をどう教えるか」よりも、**“どんな場で、誰のそばで、どんな空気の中で働いているか”**です。
なぜなら、人は「教わったこと」よりも、「観察したこと」「体験したこと」に強く影響されるからです。
たとえば:
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自分の上司が、常に笑顔で患者対応していれば、自分もそうしようと思う
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周囲が先輩に積極的に質問していれば、自分も安心して聞ける
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失敗しても励まし合う文化があれば、自分も挑戦できる
これが“環境が人を育てる”という原理です。
育成力の高い組織が整えている“環境要素”
1. 【育成フローとチェックリストがある】
何を、いつ、どの順序で学ぶのかが可視化されていることで、新人は「次に何をすべきか」が明確になり、安心感を持って進めます。
また、教える側も「抜け漏れなく教えられているか」を確認できるので、OJTの質が一定に保たれます。
2. 【“見本となる先輩”がいる】
どれだけマニュアルを用意しても、実際に現場で働く先輩が「基準通りのふるまい」をしていなければ、新人は迷い、守らなくなります。
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接遇の姿勢
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話し方
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タイムマネジメント
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クレーム対応の冷静さ
こうした“見せる教育”がある組織ほど、自然と人が育ちます。
3. 【フィードバックの文化がある】
「やってみて終わり」ではなく、「よかった点」「改善点」を伝える習慣があることで、本人は自己認識を深め、次の行動につなげられます。
ここで重要なのは、責めるのではなく、“期待を伝える”こと。
「もっとこうしてくれたら、すごく良くなると思うよ」と伝えられると、前向きな学びになります。
4. 【挑戦と失敗を許容する空気がある】
「やってみよう」「まずやってみていいよ」と言ってもらえる文化があると、新人は萎縮せず、成長が加速します。
「失敗してもリカバリーできる」と思える安心感が、挑戦意欲を引き出します。
育成担当者の“役割”は「教えること」ではない
育成担当者が担うべき最も重要な仕事は、「環境を整え、伴走すること」です。
具体的には:
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新人が安心して相談できる雰囲気をつくる
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初期段階での「成功体験」を意識的に演出する
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わからないことを「聞いてもいい空気」をつくる
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自分の背中で“基準”を見せる
新人がつまずいたときに「なぜできなかったのか」ではなく、「どうすれば次はできるか?」を一緒に考えてあげられる人が、育成力のある人です。
「育てる組織」ではなく、「育つ組織」へ
一人の“指導者”に依存する育成は限界があります。
これからの時代に求められるのは、**「組織全体で人を育てる仕組み」=“育つ組織”**です。
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誰が教えても同じように育つ
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自然と周囲に見本がある
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成長の段階が見える化されている
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努力や挑戦が称賛される文化がある
これが整えば、特別な才能や情熱を持たなくても、自然と人は成長していきます。
結論:“教える”より“育つ環境”を整えることが、人を育てる
「人が育たない」のではなく、「育ちにくい環境になっている」のかもしれません。
育成とは、“個人の責任”ではなく“組織の設計”の問題です。
あなたの職場には、安心して質問できる雰囲気がありますか?
失敗しても「成長のチャンスだ」と受け止められる土壌がありますか?
頑張っている人に、フィードバックが届いていますか?
育てようとする前に、育つ土台を整える。
それが、持続可能な組織成長の第一歩です。
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MHアドバイザリー株式会社
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