【組織マネジメント100の考え方】#25「“人事評価制度”は行動変容の装置である」

― 評価は「人を測る」ものではなく、「人を動かす」仕組みである ―

「人事評価って必要なんですか?」
「点数をつけるだけで、現場のやる気が下がるのでは?」
「頑張っているのに評価されていないという不満が多い」

こうした疑問や悩みを抱える組織は少なくありません。特に中小企業や医療現場では、「評価=人をジャッジするもの」という印象が強く、制度の導入や運用に対して慎重になりがちです。

しかし、人事評価制度の本質は“数値化”でも“ランク付け”でもありません。
評価制度とは、「望ましい行動」を明示し、それを促進するための“行動変容の装置”なのです。


人事評価は「動機づけの仕組み」である

そもそも人事評価制度の目的とは何でしょうか?

  • 給与や昇進の判断材料?

  • 頑張りを可視化する手段?

  • 上司の満足度を表すもの?

どれも一部は正解ですが、最も本質的な目的は、

**「組織として望む行動や成果に、社員が自発的に近づいていくよう導くこと」**です。

つまり、評価制度は単なる“報酬の配分装置”ではなく、**人の行動を設計する“経営ツール”**なのです。


なぜ評価制度で“行動”が変わるのか?

人は、「評価される基準」がわかると、そこに向けて行動を最適化しようとします。
たとえば、以下のような評価項目が明示されていれば:

  • 「笑顔で挨拶できているか」

  • 「チーム内の協力姿勢があるか」

  • 「患者説明でのわかりやすさ」

  • 「時間管理の意識があるか」

この項目に点数がつき、フィードバックがあり、報酬や昇進に影響するとしたら、
スタッフは自然と「そこを意識して日常行動を変えよう」とするようになります。

つまり、評価項目が“行動のガイドライン”になるのです。


評価制度がうまくいかない3つの誤解

①「評価=人をジャッジするもの」という誤解

評価制度は「あなたは〇点」と格付けする道具ではありません。
むしろ、「こういう行動をしてほしい」「ここを伸ばしてほしい」と伝えるコミュニケーションツールです。

②「評価=給与を決めるだけのもの」という誤解

もちろん報酬との連動は重要ですが、それだけに終始すると、短期的成果ばかりが追われ、行動の質や人間関係が崩れる危険性もあります。

本来は、**成長の方向を共有するための“対話の道具”**でもあるのです。

③「完璧な制度をつくらないと機能しない」という誤解

最初から完璧を目指す必要はありません。
むしろ、「まず小さく始めて、運用しながら調整していく」ことが、現場になじむ評価制度のつくり方です。


「行動を変える」評価制度の4つのポイント

1. 【評価基準は“行動レベル”で定義する】

「頑張っている」「やる気がある」などの抽象的な言葉ではなく、

  • どんな行動をすれば「頑張っている」と判断されるのか

  • どんな言動が「チーム貢献」とみなされるのか

を具体的に定義します。
例:「毎朝10分前に出勤し、当日の準備を整える」など、誰が見てもわかる行動に落とし込むことが重要です。

2. 【定期的な面談をセットにする】

評価は“点数”ではなく、“対話”によって意味を持ちます。
上司が一方的に点をつけるのではなく、「なぜその点数なのか」「どこを期待しているか」「どうすれば伸ばせるか」を、面談でフィードバックすることが、成長とモチベーションを生みます。

3. 【“理念”や“行動指針”と結びつける】

「この評価項目は、うちの理念にこうつながっている」という説明ができれば、スタッフも納得しやすくなり、評価項目が“意味のあるもの”になります。

たとえば:「“信頼を大切にする”という理念に基づき、『約束を守る姿勢』を評価します」など。

4. 【評価結果を“改善”につなげる運用にする】

点数だけで終わらせず、そこから何を改善すべきかを本人と一緒に考え、次の行動目標として設定することで、評価は“指摘”から“成長支援”へと変わります。


成果が上がる組織は、評価制度が「空気」になっている

評価制度がうまく機能している組織では、スタッフが「今、何を期待されているか」「どこを目指せば評価されるか」が共通認識になっています。

  • 「この行動をすれば、ちゃんと見てもらえる」

  • 「頑張りが正しく評価されている」

  • 「成長の方向がわかる」

こうした“見通し”があるだけで、人は前向きに努力できるようになります。

つまり、評価制度があることではなく、評価制度が“意味あるもの”として運用されていることが、組織の行動を変えるのです。


結論:人事評価制度は「行動を変える装置」である

評価制度に「人を測る道具」というイメージを持つのではなく、
「人を育て、動かし、組織を良くするための装置」として設計することが大切です。

・何を評価するかが、行動を決める
・どう伝えるかが、やる気を左右する
・どう運用するかが、成長につながる

あなたの組織の評価制度は、「行動変容」を促せていますか?
頑張っている人が正しく報われ、改善すべき点が前向きに伝わる仕組みになっているでしょうか?

評価制度とは、「人を評価する制度」ではなく、「人が成長する制度」です。
そしてそれは、組織の未来をつくる最強の“経営ツール”になるのです。

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MHアドバイザリー株式会社

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