【組織マネジメント100の考え方】#27「“離職”は“対話の不足”で起こる」

― 辞めた理由の本音は、「伝える場がなかったから」です ―

「せっかく育てたスタッフが突然辞めてしまった」
「離職理由は“家庭の事情”と聞いたが、実際は違ったらしい」
「評価も給与も上げていたのに、なぜ定着しないのか…」

こうした悩みを持つ経営者やマネージャーは少なくありません。
給与を改善し、福利厚生も整え、表彰制度を用意しても、なぜか人が離れていく——。その背景にあるのは、意外にも「制度の問題」ではなく、**“対話の不足”**です。

離職は、ある日突然起きるわけではありません。
それは、小さなすれ違いや不満、孤独、誤解が、「伝える機会がないまま」積み重なった結果なのです。


人は「評価」よりも「理解されたい」

多くの調査でも示されているように、**離職の最大の理由は「人間関係」や「承認されていないと感じること」**にあります。

  • 「上司が自分の頑張りを見ていない」

  • 「言いたいことがあるけれど、言えない空気がある」

  • 「いつも独りで仕事をしている感覚がある」

こうした感情は、本人から口にされることは少ないですが、内側で確実に蓄積されていきます。
そしてある日、「ここではもう頑張れない」と心が折れるのです。

つまり、離職は「評価」ではなく、「会話の不在」から始まっているのです。


離職予防のカギは「日常の対話」にある

組織でよくあるのが、「退職の面談では本音を言うが、在職中は何も言わない」という現象。
これはつまり、「本音を言える場がなかった」ことの証明です。

逆に、定着率が高い組織には以下の共通点があります:

  • 上司と部下の1on1が定期的に行われている

  • 日報・週報に対するフィードバックがある

  • 雑談が自然に生まれている

  • 小さな相談や提案を歓迎する空気がある

つまり、“対話”が組織に根付いているのです。


対話がない組織で起きていること

1. 【すれ違いが修正されない】

「指示の意味がよく分からないけど、聞けなかった」
「思いはあるけど、忙しそうで相談できなかった」
こうしたすれ違いは、時間が経つほど大きな“温度差”になっていきます。

2. 【不満が“蓄積”される】

不満や違和感は、言葉にされなければ“圧力”として蓄積されていきます。
そして何かのきっかけで、一気に爆発し「もう限界」となってしまうのです。

3. 【モチベーションの“回復機会”がない】

仕事にやりがいを感じられなくなったとき、本来は誰かとの対話で再確認できるはずです。
しかし、対話がなければ「このままでいいのか?」と孤独に悩み続け、出口として“退職”を選ぶようになります。


離職を防ぐ対話のつくり方

1. 【定期的な1on1を制度化する】

最低でも月に1回、15〜30分でも構いません。
「業務の確認」ではなく、「気持ち・考え・状態」を聞くための時間を確保します。

ポイントは、「話す」より「聞く」こと。

  • 最近、調子はどう?

  • 今の仕事で不安なことはある?

  • 3ヶ月後、どんな自分でいたい?

こうした“未来に向けた対話”は、本人の自己認識と信頼感を深めます。

2. 【日報・週報にリアクションを返す】

書かせて終わりにせず、上司から一言でも「気づいているよ」という返信をすることで、
「ちゃんと見てもらえている」という実感が生まれます。

これは心理的安全性に直結し、離職リスクを下げる強力な仕組みになります。

3. 【雑談を“場づくり”の一部と考える】

“雑談”は、最もハードルの低い対話のかたちです。
朝のひとこと、昼休憩での話題、移動中の会話——こうした日常の中でこそ、本音や悩みの種が垣間見えます。

あえて“雑談のきっかけ”をマネジメントに取り入れるくらいでちょうど良いのです。


「辞めたい」と言われる前に、できることがある

離職の兆候は、必ず“行動”や“態度”に現れます。

  • 急に報連相が減った

  • 表情が硬くなった

  • 周囲との関わりが減った

  • 遅刻や早退が増えた

こうした変化を見逃さず、「最近どう?」と声をかける勇気が、最も大切です。
そして、「相談してよかった」と思える対応ができれば、その1回が“離職の予防線”になります。


結論:離職は「伝える場がないこと」で起きる

評価を整えても、給与を上げても、制度を改革しても、
**「この人には話せる」「この職場なら聴いてもらえる」**という感覚がなければ、人は静かに去っていきます。

離職は、業績の問題ではありません。信頼の問題です。
そして、信頼は“会話”から生まれます。

あなたの組織では、スタッフとどれだけ対話ができていますか?
最後の退職届が出される前に、「今の気持ち」を聴ける場はありますか?

離職は防げます。
それは、“話せる職場”をつくるという、シンプルだけれど最も大切な取り組みから始まるのです。

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MHアドバイザリー株式会社

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