― 人のせいにしてしまう組織には、必ず“仕組みの欠陥”がある ―
「誰も自分ごととして捉えていない」
「問題が起きると、すぐ“あの人のせい”になる」
「何度注意しても、主体性が育たない」
このような“他責思考”に悩む現場は多く存在します。
本来であれば、課題や失敗を「自分ごと」として捉え、改善に向けて動いてほしい。
けれども現実には、「言い訳」「責任転嫁」「無関心」といった態度が目立ち、組織全体の推進力が鈍ってしまう。
では、どうすれば他責思考をなくすことができるのでしょうか?
その答えは、個人の意識改革ではなく、“組織構造の見直し”にあります。
他責思考は“構造的な病”である
まず理解すべきは、他責思考は“個人の性格”ではなく、“環境がつくり出す反応”であるということです。
つまり、人のせいにしたくなる状況や雰囲気が、組織の中に存在しているのです。
たとえば:
-
目標が不明確で、自分の責任範囲が曖昧
-
ミスを責める文化があり、防衛的になる
-
成果を評価する仕組みが不公平
-
上司が常に正解を決めてしまう
-
課題の発見より、“犯人探し”が優先される
このような“構造の歪み”が、他責思考を助長してしまうのです。
他責思考がもたらす組織のダメージ
1. 【成長が止まる】
自分に責任がないと思えば、反省も学びも生まれません。
「なぜこうなったか」を考えるのではなく、「誰のせいか」を探すようになると、組織の知性は低下します。
2. 【信頼が損なわれる】
責任の押し付け合いが始まれば、メンバー間の関係性は悪化し、協力体制が崩れます。
「仲間」ではなく「敵」になる空気が、チームを蝕んでいきます。
3. 【主体性が奪われる】
他責思考が蔓延すると、「どうせ自分が何を言っても変わらない」という諦めが広がり、誰も“動こう”としなくなります。
他責思考を防ぐための“構造改革”5つの視点
1. 【目的と責任の範囲を明確にする】
人は「曖昧なもの」からは逃げます。
そのため、役割や目標が不明確だと、「これは私の仕事ではない」と責任を回避しやすくなります。
→ 対策:
-
職務定義書を見直す
-
チームの目標と個人目標をリンクさせる
-
プロジェクトの責任者・協力者・相談先を明示する
2. 【ミスを“学び”と捉える文化をつくる】
他責の根底には、「失敗=悪」という思い込みがあります。
失敗が責められる環境では、人は保身的になり、自分の非を認められなくなります。
→ 対策:
-
ミスを共有する「振り返り会議」を定例化
-
成功事例だけでなく“失敗事例”も表彰する
-
「なぜ?」よりも「どうすれば?」を問う
3. 【評価基準を“個人”だけでなく“チーム”にも設定する】
個人の成果ばかりが評価されると、責任回避と自己防衛が起きやすくなります。
一方で、チーム全体での成果や協力姿勢を評価する制度があれば、“協働”が促進されます。
→ 対策:
-
個人+チームのハイブリッド評価
-
チームの成果に応じたインセンティブ制度
-
協力やフォローを可視化し、定性評価に反映
4. 【「なぜそうしたか?」を聴く文化をつくる】
他責思考の防止には、“聴いてくれる安心感”が必要です。
「責められる」と思っている限り、人は正直に話しません。
→ 対策:
-
上司が定期的に1on1を行う
-
“対話の場”と“報告の場”を分ける
-
問題が起きたときこそ、冷静に「背景」を聴く姿勢を持つ
5. 【経営・リーダー自身が“自責”を体現する】
「他責文化」の根本には、トップやリーダーの姿勢があります。
「現場が悪い」「部下の質が低い」と発言する上司がいる限り、現場も責任を引き受ける気になれません。
→ 対策:
-
「この状況をつくったのは自分だ」と口にする
-
部下の失敗を“自分のマネジメントの課題”と捉える
-
チームの成果は“みんなの手柄”として共有する
他責が消えたとき、組織の行動は変わる
責任を押し付ける人がいなくなった瞬間、
人は「自分にできることは何か?」と考え始めます。
その結果:
-
自発的な行動が増える
-
改善提案が出る
-
部署を越えた連携が活発になる
-
誰かが困っていたら自然と手が伸びる
こうした現象は、意識改革ではなく「構造と関係性の設計」で実現できるのです。
結論:人のせいにされる組織には、“仕組みの穴”がある
「うちのスタッフは他責傾向が強い」と感じたとき、
まず見るべきは、“人”ではなく“仕組み”です。
-
その責任範囲は明確か?
-
ミスを許容する文化はあるか?
-
成果と努力が正しく評価されているか?
-
聴き合える空気があるか?
-
リーダー自身が自責で語れているか?
他責をなくすには、“問い方”を変えることから始めましょう。
「誰が悪い?」ではなく、「なぜこうなった?」と問うこと。
そして、「次にどうする?」を一緒に考えられる関係と構造を整えること。
他責がなくなれば、組織は驚くほど前に進み始めます。
ーーー
MHアドバイザリー株式会社
Instagram:https://www.instagram.com/minato_healthcare?igsh=azB3d2VnMGk1bzBx&utm_source=qr
X(旧:Twitter):https://x.com/minato_health?s=21&t=8d0UYg_mX_CXOu8ZkAhHTg
ーーー