【組織マネジメント100の考え方】#38「“育成の仕組み”があるからこそ、人は伸びる」

― 教える人が変わっても、育つ組織の秘密 ―

「人によって教え方がバラバラで、新人が混乱している」
「育てるのに時間がかかりすぎる」
「せっかく育ったスタッフが辞めてしまい、また一からやり直し」

こうした悩みを抱えている組織は少なくありません。
人材育成は、組織の未来を左右する重要なテーマでありながら、多くの現場では“個人任せ”の状態に置かれています。

しかし、成長する組織には共通して「育成の仕組み」があります。
つまり、人に頼らず、“仕組みで人が育つ状態”をつくっているのです。


育成が属人的な組織の問題点

1. 教える人によって質にばらつきが出る

「◯◯先輩に教わった人は優秀だけど、△△先輩に教わった人は自信がなさそう」
このような状態では、組織全体の成長にムラが出ます。

2. 教え方・順番・基準があいまい

何をどのタイミングで教えるかが決まっていないため、新人は不安になり、育成者は「ちゃんと教えたはず」と感覚的に対応してしまいます。

3. 教育コストが高く、成果が安定しない

毎回、ゼロから教え直し。ベテランが抜けるたびに育成レベルが落ちる。これは、“教育が再現できていない”状態です。


なぜ“仕組み”があると人は育つのか?

①【教育の質とスピードが安定する】

育成カリキュラムやマニュアルが整備されていれば、「誰が教えても、一定のレベルで育成ができる」ようになります。

また、新人自身も「次に何を学ぶのか」がわかるため、安心して学習に取り組めます。

②【教える側の負担が減る】

「何を教えるべきか」「どこまで理解しているか」が可視化されていれば、育成者の心理的負担が減り、教えることに集中できます。

③【育成状況を“見える化”できる】

進捗状況や理解度をチェックリストや評価シートで管理できれば、「どこでつまずいているか」「誰にサポートが必要か」が明確になります。


育成の仕組みをつくる5つの要素

1. 【育成カリキュラム】

“入社から○週間で、どの知識・スキルを身につけるか”を週単位・月単位で整理した設計図。
例:

  • 1週目:基本マナー・ルールの理解

  • 2週目:接遇・電話応対の実践

  • 3週目:OJT形式での実践業務

これにより、育成に“リズム”が生まれます。

2. 【教育マニュアル】

業務ごとの“教えるべき基準”を明文化します。
例:「受付業務」について

  • 電話応対:1コール以内に取る

  • 言葉づかい:敬語の具体例

  • トラブル時の対応フロー

“どこまでできれば合格か”のラインを共有することで、評価の公平性が生まれます。

3. 【チェックリスト】

「できる/できない」を主観ではなく、行動ベースで確認するための道具。
例:「患者対応チェックリスト」

  • 目線を合わせて挨拶できたか

  • 相手の話を最後まで聞いたか

  • 感謝の言葉を添えて対応したか

行動基準が明確だと、教える側も教えられる側も迷いません。

4. 【OJT計画シート】

OJT(On the Job Training)で「誰が・何を・いつ・どのように教えるか」を計画的に設定し、属人化を防ぎます。

  • 指導担当者の割り当て

  • 実技指導の順番

  • フィードバックのタイミング

これがあるだけで、OJTの質が格段に上がります。

5. 【定期的な振り返り面談】

1on1などで定期的に育成状況を振り返ることで、「どこで悩んでいるか」「何を強化すべきか」が明確になります。

  • 成長実感の言語化

  • 不安や不満の吸い上げ

  • 今後の学習計画の調整

このプロセスが、“学びの持続”を支えます。


「仕組み」が育成を支える最大のメリット

  1. 担当が変わっても、育成の質が安定する

  2. 新卒・中途・パートなど、どんな人材にも対応できる

  3. 成長を“見える化”し、モチベーションアップに貢献する

  4. 育成者の能力に依存しない“持続可能な教育体制”がつくれる

  5. 新人が“自信を持てる状態”になるまでの道筋を示せる

これらは、すべて“仕組み”があるからこそ実現できるのです。


結論:「人が育たない」のではなく「仕組みがない」

「なぜ育たないのか?」
「どうすればもっと早く戦力化できるのか?」

その答えは、個々の努力や指導スキルだけでなく、“育成の仕組み”があるかどうかにかかっています。

あなたの組織には:

  • 明確な育成ステップがありますか?

  • 教える内容と順番が共有されていますか?

  • 新人が「何ができれば合格か」を理解できていますか?

人が育つのは、“偶然”ではなく“設計”によって実現される。
そして、仕組みがあるからこそ、誰もが安心して成長できる。

それが、未来を担う人材をつくる、本質的な組織力です。

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MHアドバイザリー株式会社

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