【組織マネジメント100の考え方】#43「“教育担当者”の育成が、組織の学習力を決める」

― 教える人を育てることが、組織全体の成長を加速させる ―

「新人教育が人によってばらつく」
「教え方が属人的で、育成スピードが安定しない」
「優秀なスタッフに教育を任せたら、逆に退職してしまった」

こうした問題は、どの組織にも起こり得ます。
そしてその多くは、「教育担当者=現場で活躍している人=教えるのがうまい」という誤った前提に起因しています。

教える力は“才能”ではなく“スキル”です。
だからこそ、教育担当者を“育てる”という視点を持たなければ、組織の学習力は頭打ちになります。


なぜ「教育担当者の育成」が重要なのか?

1. 【新人教育の質が担当者次第になる】

「◯◯さんに教わった人は伸びるけど、△△さんに教わった人はすぐ辞める」
このように、指導者によって育成成果が大きく異なる状態は、組織の成長にブレーキをかけます。

2. 【現場の優秀者=教育が上手とは限らない】

優秀なプレイヤーが、必ずしも優れたコーチとは限りません。
“感覚的にできる人”ほど、「なぜできないのかが分からない」という壁にぶつかりやすく、教えることにストレスを抱えてしまいます。

3. 【教育担当者が疲弊・孤立しやすい】

育成の責任を一人で背負い、答えのない悩みを抱え込み、相談相手もおらずに苦しくなってしまう。
これでは、育てる側も続きません。


教育担当者に必要な5つのスキルとマインド

①【相手のレベルに合わせて教える“分解力”】

自分ができることを、未経験者にも分かるように分解・説明する力が必要です。

例:

  • 「丁寧に接客して」と言う代わりに →「目線を合わせてあいさつ」「ゆっくり話す」など行動に分解

  • 「しっかり確認して」と言う代わりに →「3秒間止まって再チェック」など具体化

“見える化された行動”に落とし込める教育者が、現場の学習力を高めます。

②【“できない理由”を理解する“観察力”】

ミスや未達成に対して、「なんでできないの?」ではなく、

  • 「どこでつまずいている?」

  • 「何に迷いがある?」

  • 「不安を感じている点は?」
    と、背景を読み解く力が重要です。

これにより、“指摘”ではなく“支援”の教育が実現します。

③【教える順序と負荷の設計力】

成長に必要なのは、「成功体験の積み重ね」です。
そのためには、

  • 「いきなり全部」ではなく「少しずつ」

  • 「まずはこれだけ覚えればOK」

  • 「次はこれをチャレンジしよう」
    と、段階的にスモールステップを設計する力が求められます。

④【フィードバックの技術】

上手に教える人は、

  • よい点を具体的に認め

  • 改善点は責めずに提案し

  • “なぜそれが必要か”を納得させる

といった、“心に届く伝え方”をしています。
このスキルは練習で習得できます。

⑤【相手の成長を心から願うマインド】

「何度も同じことを言わせないで」ではなく、
「この人が成長したら、どんな貢献ができるだろう?」という視点を持てる人こそ、真の教育者です。
この“スタンス”が、言葉の温度と行動にあらわれます。


教育担当者を育成する組織の取り組み例

● 育成者向けの「教え方研修」の実施

  • 分かりやすい伝え方の型(PREP法など)

  • フィードバックの技術(Iメッセージ、具体化など)

  • 世代間ギャップや心理的安全性の理解

● OJT計画とチェックシートの整備

“いつ、誰が、何を教えるか”を可視化し、属人化を防ぐ。

  • 指導内容・指導方法の標準化

  • 成果の見える化

  • フィードバックをチームで共有

● 育成担当者同士の振り返り会議

「うまくいった指導」「困っていること」などを共有し合い、学び合える育成者チームをつくる。
これにより、教育担当者が孤立せず、自己成長し続けられます。


教育の文化をつくるのは、“育成者の育成”

“教える文化”がある組織は、

  • 新人が安心して学べる

  • 先輩が教えることに誇りを持てる

  • ノウハウが組織に蓄積されていく

という好循環が生まれます。

一方で、「育成は現場の人に丸投げ」「教え方は感覚頼み」の組織では、

  • 育つ人と育たない人の差が大きく

  • ベテランが疲弊し

  • 離職が増える
    という悪循環に陥ります。


結論:教える力を育てることが、組織の未来をつくる

人を育てる組織とは、
“人が育つ仕組み”だけでなく、
“人を育てる人”を育てている組織です。

あなたの組織には:

  • 教育担当者に対するサポートと研修がありますか?

  • 育成のノウハウが、仕組みとして共有されていますか?

  • 教える側が“育っていける”文化がありますか?

“育成力”は、リーダーだけの課題ではなく、組織全体の資産です。
だからこそ、教育担当者の育成に本気で取り組むことが、長期的な人材戦略の第一歩なのです。

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MHアドバイザリー株式会社

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