【生産性向上100の考え方】#17「患者対応の重複をなくす ~予診・説明の再分担~」

はじめに

医療機関では、患者対応が多重構造になりやすい傾向があります。受付で聞かれた内容を看護師も確認し、医師も再度同じ質問を繰り返す。説明も、医師が伝えた後にスタッフが補足し、さらに会計窓口で再度案内する――こうした「重複対応」は、患者にとって煩雑であり、スタッフにとっては時間的負担になります。

この重複をなくし、対応の「役割分担」と「一元化」を進めることで、診療フローは大幅に効率化できます。


重複対応が発生する理由

1. 責任の所在が曖昧
「誰がどの説明まで行うか」が決まっていないため、念のため全員が同じことを確認してしまう。

2. 情報共有の不足
問診や説明がシステムに反映されず、後工程のスタッフが再度聞き直す。

3. 安心感を求める文化
「念のため再確認した方が安全」という発想が、結果として非効率を生む。

4. 教育・研修の不足
スタッフが説明や予診を任される経験が少なく、医師に依存しがちになる。


重複がもたらすデメリット

・患者の不満:「さっきも同じことを聞かれた」と不信感が生まれる。

・時間の浪費:同じ説明を繰り返すことで診療時間が長引く。

・スタッフの疲弊:必要以上にエネルギーを消耗し、改善活動の余力がなくなる。

・経営効率の低下:診療回転率が下がり、収益性にも影響する。


再分担の基本方針

1. 役割を明確にする

・初期対応(受付・予診):症状の基本情報、既往歴、アレルギー確認

・医師:診断に必要な追加質問、治療方針の決定

・看護師・歯科衛生士:処置や検査の説明、生活指導

・事務スタッフ:会計・予約・補助的案内

2. 説明を一元化する

・治療や検査の詳細説明は「担当者を一人に絞る」

・患者が「誰に聞けばよいか」を明確にすることで混乱を防ぐ。

3. 記録を全員で共有する

・電子カルテや問診システムに入力した情報を全スタッフが閲覧できるようにする。

・口頭の伝達に頼らず「記録を見ればわかる」体制をつくる。


ICTを活用した再分担

・Web問診:患者自身に事前に入力してもらい、受付・看護師・医師が同じ情報を参照できる。

・電子カルテのテンプレート:説明内容や同意の確認を統一し、誰がどこまで説明したかを残す。

・動画・資料の活用:繰り返しが必要な標準説明(検査準備、生活習慣指導など)はツールに任せる。


医科クリニックの実例

ある内科クリニックでは、初診患者が来院すると「受付→看護師→医師」と同じ質問を3回受ける流れでした。患者から「何度も同じことを答えるのが煩わしい」との声が上がり、改善を検討。

Web問診を導入し、スタッフはその内容を確認するだけに変更。看護師は補足事項の確認に専念し、医師は診断に必要な質問に集中しました。その結果、初診時の所要時間が平均10分短縮され、患者満足度アンケートでも「スムーズになった」と高評価を得ました。


歯科医院の実例

ある歯科医院では、治療方針を医師が説明した後、歯科衛生士も同じ内容を繰り返していました。患者は「同じ説明ばかりで時間が長い」と不満を抱いていました。

そこで、医師は診断と治療方針の概要だけを説明し、詳細なセルフケア指導や費用の説明を衛生士に一任。説明の重複を避ける一方で、補足的なケア情報は衛生士が強化する流れに変更しました。その結果、説明時間は短縮されながらも、患者理解度は向上しました。


実践ステップ

1. 現状フローを可視化
どの場面で「重複」が発生しているかをマッピングする。

2. 誰がどの説明をするかを再定義
例:薬の副作用は医師、服薬方法は看護師、再来予約は受付。

3. 共通の記録フォーマットをつくる
誰が説明したかを簡単に残せるチェック欄を設ける。

4. 患者への案内を統一
「この件については〇〇スタッフがご説明します」と案内し、患者の混乱を防ぐ。

5. 定期的に改善サイクルを回す
患者アンケートやスタッフ会議で「まだ重複があるか?」を確認し続ける。


再分担を成功させるポイント

・安心と効率のバランス
説明不足になれば不信感につながるため、削りすぎないことが大切。

・教育と信頼
医師がスタッフに説明業務を任せられるよう、教育とトレーニングを行う。

・小さく始める
まずは1つの説明領域(例:検査準備説明)だけをスタッフに任せ、うまくいけば範囲を広げる。


まとめ

患者対応の重複をなくすことは、単なる効率化にとどまらず、患者にとって「わかりやすく安心できる診療体験」を提供するための取り組みです。

・誰がどの説明を行うか役割を明確にする

・情報共有を徹底し、同じ質問を繰り返さない

・ICTや動画を活用して標準説明を自動化する

・医師は診断と方針決定、スタッフは補足・指導に特化する

これにより、診療フローは簡潔になり、患者満足・スタッフの効率・経営の安定という三つの成果を同時に実現できます。


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