【生産性向上100の考え方】#11「『やらないことを決める』勇気と選択」

はじめに

医療機関の経営者や院長にとって最大の課題のひとつは、「やるべきことが多すぎる」という現実です。診療、スタッフマネジメント、患者対応、経営判断、地域活動――気づけば膨大なタスクに追われ、「忙しいのに成果が出ない」という状態に陥りがちです。

この状況を打開するために必要なのが、「やらないことを決める勇気」です。つまり、限られた時間とエネルギーを「本当に必要なこと」に集中するために、優先度の低い活動を意図的に捨てるという発想です。


なぜ「やらないこと」が重要なのか

1. 時間は有限だから
院長の時間価値は非常に高い(第6章で解説済)。低い価値の仕事に時間を奪われれば、経営的には大きな機会損失になる。

2. 成果は集中から生まれるから
すべてをやろうとすれば、どれも中途半端になり、大きな成果が出ない。選択と集中こそが成果を最大化する。

3. 組織に不要な負担をかけないため
「やめても支障のない業務」を続けることは、スタッフの労力を浪費させ、疲弊や離職の原因にもなる。


医療機関にありがちな「やらなくてもいい仕事」

1. 惰性で続けている業務

・毎朝の全員集合の朝礼(人数が増えて効率低下している場合)

・紙ベースの記録や手書きのダブル入力

2. 成果に結びつかないイベントや広告

・効果測定をしていない高額な広告出稿

・来院につながらない地域イベント参加

3. 院長しかやっていないが、委譲できる業務

・備品発注、請求書の処理、業者対応

・スタッフ間の細かな調整や雑務

4. 「患者満足」と勘違いされている過剰サービス

・無駄に豪華な院内装飾

・スタッフに過剰な雑務を強いるような対応


「やらないこと」を決めるためのフレームワーク

1. 業務棚卸し

・院内の業務をすべて書き出す

・各業務を「必須」「代替可能」「不要」に分類する

2. 優先順位の基準を明確化

・成果に直結しているか?

・院長や専門職でなければできないか?

・患者満足や経営安定に寄与しているか?

この基準を満たさない業務は「やらない」候補に。

3. 「やらないリスト」をつくる

「To Doリスト」だけでなく、「Not To Doリスト」を掲げる。

例:

・院長が直接行う備品発注はやめる

・効果測定のない広告出稿はやめる

・手作業での集計はやめる(ICT導入で代替)

4. 定期的に見直す
一度やめても、状況が変われば必要になる業務もある。半年ごとに見直しを行うことで柔軟に対応できる。


医科クリニックの実例

ある内科クリニックでは、毎月スタッフ全員が1日かけて「院内清掃イベント」を行っていました。確かに美化は大切ですが、外部清掃業者に委託すれば同等の品質が保てると判断。業者委託に切り替えた結果、スタッフの月間労働時間を合計50時間削減でき、その時間を患者フォローの電話や説明資料の作成に充てることができました。結果、再来率が改善し、経営的にもプラスに転じました。

この例は「やらないことを決める」勇気が、単なる時間削減にとどまらず、組織全体の成果を高めたケースです。


「やらない」を浸透させるためのポイント

1. 院長が率先してやめる
院長自身が雑務を手放す姿勢を見せることで、スタッフも「やらない勇気」を持てる。

2. やめたことを称賛する
新しいことを始めるより、何かをやめる方が勇気がいる。やめた決断自体を評価する文化をつくる。

3. 数字で効果を示す
「やめたことでこれだけ時間が浮いた」「経費が〇%減った」と可視化すると、納得感が増す。


「やらないこと」を決めることで得られる未来

・院長の時間が創出され、経営判断に集中できる

・スタッフが本質的な仕事にエネルギーを注げる

・患者サービスが洗練され、満足度が高まる

・組織がシンプルになり、持続可能な成長が可能になる


まとめ

「やらないことを決める」ことは、怠慢でも妥協でもありません。

むしろ、限られた資源を最大限に活かすための積極的な経営判断です。

・業務棚卸しを行い、不要な仕事を見極める

・「やらないリスト」を掲げ、組織で共有する

・院長自らが率先して手放し、数字で効果を示す

これにより、医療機関は「忙しさに振り回される組織」から「選択と集中で成果を出す組織」へと進化します。


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